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「コミュニケーションを誘発する建築」
今回のトピックスは
SUMICA
のデザインを担当した建築家長坂常氏にスポットを当てます。
長坂 常
Nagasaka,Jou/建築家
有限会社スキーマ建築計画代表取締役
http://www.sschemata.com
Contact:
joujou@sschemata.com
2002年3月20日 スキーマ建築計画オフィスにて
インタビュアー:大島芳彦(blue studio)
blue studio(以下BS):
(
SUMICA
は)全8世帯の入居者も決まりホッと一息ですね。お疲れさまでした。
ブルースタジオの企画でリノベーションを手がけられたのは今回が初めてですが、
SUMICA
を完了してみてどのような印象を受けましたか?
長坂氏(以下JN):
今回の
SUMICA
はもとが木賃(ボロ)アパートですから設計段階では大分想像力を働かせましたね。これは完成してみると、結果的には住む人たちにも想像力(創造力)を要求する事になったような気がします。当然コストの問題もあったのですが、設計段階では「様々な要素を切り捨てていく」という操作が大きなウェイトを占めました。「何かが足りない」というデザイン。これは住む人にも、工夫したり考えたり、自分なりの生活を創り出すために右脳を使うチャンスを与えることになりました。
これは誰にでも受け入れられることでは無いのですけれど、好きな人間には絶対に他では味わえない楽しさになると思いますよ。だからこのアパートには似たもの同士が集まってくると思いますね。
BS:
それは共同住宅のあり方として面白いですね。
JN:
日本のマンションのほとんどは世帯毎の独立性(プライバシー)が強くて「隣の人の顔なんか見たこと無い」とか「ピアノの音がうるさくて殺人」みたいな話が頻繁に聞かれるじゃないですか。これはコミュニティーのあり方として悲しい事ですよね。ところが、この
SUMICA
には生き方や考え方を共有する人たちが集まってくるからお互いのコミュニケーションも活発になるんじゃないかと思ってるんです。
BS:
最近流行のデザイナーズマンションの住人はどうなんでしょう。
JN:
コミュニティーという意味ではあまり一般的なマンションと変わらないと思います。自分も建築家なのでこれに対して一般化した見解を述べるのもおかしいのですが、結局あれは表層的なファッションを追い求めている人たちに消費されている、というケースが多いんじゃないかと思うんです。あまり彼らの根本的なライフスタイルとは無関係な気がしますね。
BS:
建築家のある意味エゴによって作られたモノをステイタスとして自分の住まいにする。この作り手と住み手の閉鎖的な関係は戸建てなどの場合一般的に見られるものですが、共同住宅のコミュニティーというイメージにはほど遠いモノを感じますね。
JN:
建築家やディベロッパーの責任が大きいですね。リノベーションに限らず当然新築でもコンセプトやデザインによって良好なコミュニティーを形成する事は可能だと思います。
BS:
長坂さんはそのような視点も含め、常にどのようなスタンスでモノ造りをされているのですか。
JN:
今回の
SUMICA
プロジェクトにも共通するのですが、やはり「何かが足りない」という事は常に共通のテーマですね。何でもそろっていますという主張の強すぎる作品ではなく、先ほどの話のように見る人、住む人にも考えてもらう余裕のある作品を作って行きたいんです。実は僕が恥ずかしがり屋だってことも大きく関係しているんですけどね(笑)。
BS:
具体的に「足りない」というのはどんな事なのでしょうか。
JN:
わかりやすく言えば「ビシッとかっこいい服を着ているのに頭がボサボサ」とか「ドレスアップした美しい女性がノーメーク」みたいなことですよ。どこか人間的で親近感の沸く部分という事ですね。使う人や住む人が親しみの沸くものをどこかに挿入したいという思いです。
BS:
コミュニケーションを誘発させるようなデザインってことなんでしょうね。
きっと他にも沢山の物作りに対する思いがある事と思いますが、今日は
SUMICA
をきっかけに興味深いお話を伺うことが出来ました。有り難うございました。