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アートを巡って成熟するマーケット

EI:ヒヂヤさんの御子息がはじめて入れるんです。一度相続されたお金というのは「浄化された」という考え方がヨーロッパにはあります。日本のようなネガティブな考え方はされません。ただし「そのお金は、社会から一時期あなたが預かったものであるから、社会にこれを還元する為の教養を身に付けなさい」と、そういう意味合いで社交界があるという側面があります。もちろんそれが全てではありませんが。つまり哲学を学び、美術を学び、経済を学び、投資することの意味も学ぶ。総合的な教養を社交界を通じて、学んでいくわけです。現代美術は、そうしたエスタブリッシュ層のある種の免罪符的な意味合いを持っており、彼等の会話の要素のひとつとして、重要な部分を占めています。同時代のコンテンツ分野の最先端のカテゴリーであると同時に、世界中の富裕層がこれを買い支え、コレクションすることで、富裕層の中での差別化を図っているわけです。これは今に始まったことではなく、ギリシャから延々と行われてきた美術家と富裕層との関係性を物語る構図です。

現代美術では、よく「コミッションワーク」と呼ばれるものがあります。ある作家に対して自分だけの一点モノ・・・例えば自宅の壁面の大きさにあった作品等を指名発注することで。お金があれば既製品は買えますが、いくらお金があったとしても自分自身の知性や哲学、選択眼無くしては絶対に手に入らないもの、それが現代美術の「コミッションワーク」です。

BS:世界にひとつしかないその作品に、自分自身の教養が反映されているということですね。

EI:そうです。そして実は、そういう作品が市場における流通性を持っているわけです。ある業界がダウンしたら、新興の業界で成功したあらたな富裕層が買い支えるといったような、特殊なB2Bのマーケットが存在している。

BS:それはつまり、マーケットが成熟しているということですね。

EI:そうですね。欧米においては。ですが、日本にはそういったマーケットはありません。ただ、つくり手側に関しては、日本人や他のアジアの作家達がそうしたフィールドで十分戦えるようになってきたんです。ここ3〜4年の間で。また、世界の資金がこのフィールドに大きく流れてきているのも確かです。モダンアートからコンテンポラリーアートの方へですね、、、つまりこういうことです。純粋に投資家として考えると、50億のピカソを1点買うんだったらコンテンポラリーアートの優れた作品を5000万で100点買った方がいい。

BS:・・・な、るほど。。。非常によ〜く分かりました。

EI:更に、いままでこの分野はアメリカ中心だったんですが、今はヨーロッパがその主導権を握ろうとしています。仏資本がオークションハウス自体を買収したり、作家のデータベース、つまり証券銘柄の一覧みたいなものですね・・・これを体系立て開示していくことで、きちんとしたマーケットに育てて行こうというはっきりした方向性を打ち出しています。今後ヨーロッパではこれまで以上にマーケットが投資分野として現代美術市場が成熟していく可能性があります。

BS:作品購入者はコレクターですか?

EI:そうです。コレクターは2種類います。ひとつはその作品を持ち続けようとしている人たちです。もうひとつは、投資目的として、金融商品としてこれを買う人たち。

BS:後者の方が数が多いでしょうか。

EI:むしろ逆です。できれば作家は前者のタイプのコレクターに買って欲しいわけです。

BS:プライスが違うからでしょうね。。。不動産も同じですね。

EI:そう。それと、作品にとっては「どこではじめに発表されたか」が重要です。

BS:履歴書みたいなものでしょうか。・・・あるいは登記簿。

EI:そうでしょうね。例えば、ポンピドゥーで展示された後にカルティエ財団に購入されたという作品と、NYのディーラーが投資目的で購入して2年間寝かせた後にポンとオークションへ出しましたという作品とは、やっぱり血統的には違います。もちろん作品の善し悪しとは別のこともあるでしょうけれどね。





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