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行政が「都市のビジョン」を語ることが大切

BS:正直なところ申しますと、実務レベルで仕事をしているわれわれもそれに近い違和感を感じる時はあります。それは、まだまだコンバージョンは発展途上であって、それぞれの特殊事例の実績を積み重ねていく段階に過ぎないからだと思います。シカゴやシドニーの事例がそっくりそのまま日本に当てはまるわけではないと思いますが、今後もっと「日本版コンバージョン」が普及・伝播していくためには何が必要だとお感じですか。

KS:資金ですね。この一点に尽きるように思います。不動産鑑定も担保評価から収益評価に少しずつ変わって来たとは言っても、最終的にお金を出す銀行が担保評価のシステムから抜けだせていません。実は各都市でもコンバージョンの初期段階ではほぼ同じ状況がありましたが、そういう膠着状態を変えるキッカケというのがどこのケースでもあったんです。

BS:それはなんでしょうか。

KS:それは、税制の優遇であったりそれを含めた政策です。日本でも、コンバージョンの賃貸住宅の補助金制度ができたりしましたが、大きなインパクトを与えるには至っておりません。各国でこれらが大きなインパクトを与えることになったのは、行政が都市のビジョンを示したことが大きな要因です。「これから街の中心街はオフィスを住宅に用途変更を進めて、住みやすい街をつくる。」という宣言です。

BS:今のお話しは、日本で言うところの「用途地域」による建築用途の誘導というレベルとは違うのでしょうか。



「コンバージョン
[ 計画・設計]マニュアル」
(2004/株式会社エクスナレッジ)
KS:それは、違います。もう少し大きいレベルの話です。例えば、シカゴでは容積率を変更していますが、それだけ強い危機意識を持っていたということです。一般的に、容積率に手を入れるという事は非常に議論が必要になるだけでなく、日本以上に都市計画の拘束の大きい地域なわけですから。。。これは相当、意識が高かったということが分かるでしょう。

BS:その動機のひとつに「都心回帰」という要因もあるのでしょうか。

KS:それ以上にどの都市にも共通しているのが、「80年代にオフィスを過剰供給した」という状況です。どこも空室率にして20%近い状況。これも大きな要因です。

BS:どうでしょうか、東京ではそれとは少し違った状況のように思いますが。例えば、2003年問題と盛んに騒がれましたが、多少の影響を一時的に与えただけで「ソフトランディングしたな」と言うのが、私の感想でもあります。

KS:確かに空室率で表現すれば8%という水準ですので東京は少し状況が違うかもしれません。今の東京の状況は新築オフィスへのリロケーションが進み「入っているビル」と「入らないビル」の二極化への進行過程と考えています。これからは「空室率」よりも「空きビル」が問題になるのではないでしょうか。

BS:行政が街のビジョンをアナウンスする事がひとつの大きな原動力になるというお話しがありました。ぶっちゃけた話、東京ではどうなんでしょうか。例えば、区レベルでいうと。。。

KS:各区行政の方々の前でプレゼンテーションした事もありました。反応は区ごとにまちまちでしたが、全体としては「まだまだ様子見」といったところです。

BS:佐藤さんは、研究会で各国・各都市の状況をリサーチされてこられたわけですが、各都市行政の「コンバージョンを奨励するビジョンアナウンスメント」の前には、コンバージョンに関して何らかの実績があったのでしょうか、あるいは無かったのでしょうか。あったとしたらそれはどういう人がリスクを取ったのでしょうか?

KS:アナウンスメントの前に実績はほぼなかったと言えます。ただ各都市で共通しているのは、そのアナウンスメントの前にレポートが出ている事です。パリとロンドンの場合のレポートを入手できたのですが、そこには、「実績はない」ということと、「この事業は難しい」という見解が示されているんです。「だから政策で誘導しなくてはならない」ということになるわけですね。しかしもちろん、「コンバージョンを進めない」ことを宣言した地区もあります。例えばロンドンでは市内の各区によってこのポリシーが異なりますので、コンバージョンを誘導する区もある一方、それを誘導しない区もあります。人口問題、雇用問題、様々な行政課題とリンクしています。

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