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一緒の景色
BS:お客さんの「言語化できないけれど欲しいもの」を具体的なかたちにしたり、お客さんの喜ぶ顔がみたいというのは第一ではある。けれどもプロダクトなら自分が使いたいとか、建築だったら自分がここに住みたいという気持ちが無かったら、製作者としてはある種の失敗なのかもしれないですね。
NT:そうだね。お客さんと製作者の隔たりを埋めるには、例えば役者と一緒で「演じる」ということが大切で「お客さんの目になりきれるかどうか」という賜物だと思う。僕はいつもお客さんに対して「コレとコレを使ってこうやって作りますよ」という説明をしたことが無い。イメージを言葉で聞くだけなんだけど、「かわいらしいのを作って」とかお客さんは言う。じゃあ「かわいいって何?」というのがあるんだけど、それを知るにはそのお客さんのバックボーンのイメージを二人で共感すること。あとはまかせてって。そしてふたりが見たことの無い自転車を作る。
BS:そのお客さんのバックボーンのイメージとか感覚的なものを汲む時、例えば自転車と関係のない話をするんですか?
NT:そう。お客さんに会って話している時、お客さんの一言、例えば「かわいい」というキーポイントを自分で消化する。その「かわいい」に共感できたら後は勝手に作るんだけど、不思議と結果は一つしか無いんだよね。いろんなハンドルを選んでも「これだ!」っていうのはひとつしかない。「じゃあその基準は何よ?」と言われたら、それは自分のバックボーン、自分の景色がそうさせているんだよね。自分の景色の中にお客さんの景色を取り込んで、一緒の景色を見て「これだな!」っていうのが出てくる。
BS:それは谷さんと「その」お客さんだから出来る自転車があるということですね。おもしろい部品が入ったから今度使おう!というのがあっても、モノにはそれを使うふさわしいタイミングと組み合わせがあるということですか?
NT:うん、不思議とあるんだよね。ねじ一個までこれじゃなくちゃダメだ!っていうのはあるんだ。しかもパーツで選んで組み合わせた時、かごはすごくいいのにハンドルが駄目というのは結果として駄目なワケ。もし自分のイメージはこれではないとか、ピッタリなパーツが世の中に無ければ自分で作っちゃうし。車体でもハンドルでも。
BS:パーツを作る時って、原寸図で工場の職人さんとやりとりするんですか?
NT:ラフなペン図を送って、手で点付けして、仮組して。職人さんは図面をおこすけど、図面でやり取りしたことは無いなぁ。いつも現物でやりとり(笑)。「もうちょっと上に曲げて」とか。
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