BS:では、自転車に対する特別な意識がありますか?「ものをつくる」中の一つでしかない?車椅子や時計などいろいろ作られていますよね。
NT:会社を辞めてずっと自転車をやりながらプロダクトデザインをやり続けている。つくることが仕事だと思っている。僕は自分のライフスタイルをすごく大事にしているのね。だからライフスタイルを大事にしている人の自転車がつくれるのかなって思う。自転車というか、ものづくり全般においてね。自転車を何故やっているかといえば、乗っていて楽しいというがある。ちっちゃい頃、初めて自転車に乗れた時のようなドキドキ感が今でもあって。僕がつくっている自転車は両極で「試合で絶対勝つ自転車」と「乗りづらい自転車」その両方を作っているんだよね。
BS:(笑)。その乗りづらさは・・・?
NT:慣れていくとこんな風にも曲がれるとか、日常なんだけど非日常みたいな。そういう発見があるだろう、うんと乗っていくとこんなにも違う世界も見えてくるというのが、自転車にはあるんだと思う。小さい頃初めて自転車に乗れた時、上手に曲がれた時、その時感じた喜びの延長にいるんだよね。一方勝つための自転車というのは、自分が持っている運動効率の経験値を盛り込んだ、軽量とか速いとかレースに勝つための自転車。その両方を追わないといけない。乗りづらさの中にも技術的な裏づけが無ければならないし。
BS:例えば技術力の集大成のような速く走るための自転車だけれども、見たことの無いかたちの自転車というのはあり得ますか?
NT:ありえるよ。ただ100年も自転車のかたちはかわってないんだよね。ドロップハンドルで三角形のフレームで。それを一人の人生の中においてそれを飛びぬけて・・・っていうのは知れば知るほど難しいんじゃないかなぁ。
BS:椅子も同じですね。180年も愛されているトーネットの椅子とか。長く使われる・長く愛されるというのにはそれなりの理由があるんでしょうね。
NT:一本だけ作っているわけじゃなくて、ながーく「座りやすさとは何か」というのを求めてつくってきた結果だから、そう簡単に太刀打ちできないよね。自転車のハンドルしかり、トーネットの椅子しかり。
BS:谷さんは昔のフレームなど古い部品をたくさん持っていますが、そういうものを採用する理由はあるんですか?
NT:昔のモノへの興味はやっぱり情熱だよね。そのモノがいいとか悪いとかと判断するのは直感。「このフレームは、職人たちが凄い情熱を持ってつくりたいと思ったんだな!」というのがわかる。いいなって思うのはそこからきてる。で、そのフレームをよく調べると手間も技術も「こんなの今つくれないよ!」というのがあるんだよね。そういう情熱に触発されるし、それを使って全体を組み立てていく作業をしたくなる。
|