| 自然への執着
BS:今このアトリエに来て水彩をやるようになって、これからまた油絵に帰ったりするのかもしれないけれども、今後の方向性というか、これからやりたいこと・描きたいものというのはありますか?
HI:やっぱり自然からは離れないだろうなぁ。ここに来る前から抽象画を描いていましたが、自分の根底にあるものは「ネイチャー」。無意識なんですけど。水とか結晶とか自然界がもっているかたちや、気配とか現象・・・そういうものにすごく惹かれるので、そういうものを造形的に突き詰めていくんじゃないかな。色であったりかたちであったり、なにかそういう自然の持つ「気配」みたいなものを表現できるんじゃないかなぁと思っています。確かに自分の動き方をみてると、自然とかそういうものにすごく執着があるし、そういうものに美を見出していると思いますね。
BS:稲垣さんの自然との付き合い方というか、自分の中にいつもあるものなんですね。油絵だ!水彩だ!というのも、その時々の自然な選択肢。
HI:コンシールカフェで展示をした時、小さい絵の廻りに額縁の代わりみたいな絵をハプニング的に描いたのですが、その時は壁に描くなら色鉛筆がいいな、じゃあ水に溶けるのがいいな、って。その時々のインスピレーションです。私は「水彩しかやらない!」といって、あれを水彩絵の具で書くのは違うと思うし。柔軟に自分が「やりたいなーいいなー」と思ったものを大事にして。手段は何でもいい。
BS:この鶴川のアトリエでの制作スタイルを変えることは当分なさそうですか?ここで展示もやられたりしていますが。
HI:うーん、、どうなるかわからないですけど、今のところはここでやっていくつもりです。ここだけだとローカルではあるけれど、展示をやった時都会から来た子が「こんなにのんびり絵を見たのは初めて」とか「こんなに自然と一体で絵を見たことが無い」とか言ってくれて。すごく喜んで帰っていったりするのを見ると、そういう時間はこれからも提供したいと思います。「作品を見て!!」とかそういうのではなくて。絵は脇役でもいいし。
BS:絵は脇役でもいいんですか?
HI:私にはあんまり「絵はこうなくてはならない」というのは無いですね。勿論、自分の中での「絵画」はとても大きい存在だけど、他人にはまた関係ないことだと思う。ある種の演出する手段。「そこにあって幸せなもの」。私の絵は美術館に掛かっているよりも、人の家にあってくれた方がいいと思うし。あんまり強く主張している絵が好きじゃないというのはあるんだけど。
BS:そういえば渋谷で稲垣さんの絵を見た時、作品ひとつひとつが気になったというより、ハコの中の「雰囲気」に強い印象が残っています。この鶴川の緑や空気みたいなものを、渋谷の繁華街に切り取って持ってきたみたいな。ギャラリーのハコはとても小さいけれどすごく居心地がよかった。
HI:あの時の展示は、普段鶴川で描き溜めたものを展示したんです。個展が決まってから描いたものではないので。それに絵を見た時の感じ方というのは、本当に人それぞれだと思います。絵だけでなく、アートはそれでいいんだと思いますね。
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